七 の 座 敷



(五)



 その夜、ちとせは風呂の裏にある、普段は薪を積んである物置に身を潜めた。
 おかつだけにはこのことを告げ、時々燗をつけた酒を運ぶように言いつけた。


 まったく、あたしゃ一体何をやっているんだよ。
 女郎の座敷を覗くなんざ、考えたこともなかった。


 わずかな苦笑を浮かべながらも、おしのへの興味が増す一方のちとせであった。
 程なく斉藤がおしのの座敷に入った様であった。ちとせは壁に耳をつけて中の様子を伺った。
 「―――斉藤様、着物を脱いで下さいまし」
 「おうおう」
 「お酒はどうなさいます」
 「いらぬわ。それより、おしの。早くやってくれないか」
 「まぁ、斉藤様。ずいぶんと気が早いことで」
おしのは手馴れた女郎の様に斉藤を落ち着かせた。
 座敷の中の二人の声は壁越しにでは鮮明さはなく、ちとせの耳にもはっきりとは伝わらなかった。それでも
ちとせは壁に耳だけではなく腹もてのひらも押し付けて、中の様子を一言ももらすまいとした。
 すでに日は落ち、あたりは夕闇が支配していた。
 そしてちとせは気が付いた。
 自分のひざほどの高さのところから、座敷の中の明かりがぼんやりともれていた。
 そのままひざを付け、壁の隙間からから中を覗いた。
 「―――斉藤様。まずはお湯で……」
 「うむ、うむ」
おしのは桶にくんである湯気のたった湯の中に手を浸し、手が真っ赤になるほど温めると、今度は湯飲みの湯を
口にためた。その湯はかなり熱いらしく、おしのは顔を赤くして耐えていた。
 柔らかな行灯の明かりはおしのの顔を照らし、斉藤のはだけた体を浮き上がらせていた。
 斉藤は着物を取り去り布団に仰向けに転がるとおしのの動きを待った。
 おしのは先にしぼってあった手ぬぐいで斉藤の股間を拭うと、口の中の湯を吐き出し、そしてそのまま斉藤を
くわえ込んだ。
 「んあぁぁ……」
斉藤は声にならない声をあげ、ぐんっと腰を跳ね上げた。
 熱を持った口腔内は興奮した斉藤自身を包み込み、きつく締め上げた。
 「―――ぐぅ……」
斉藤の足の間に身を伏せたおしのは、もぞもぞと手を動かしている様である。
 ちとせは体勢を変えつつおしのの手の動きを見つめた。
 しかしおしのの体がじゃまをして斉藤にほどこされている動きが見えない。ちとせはあせりを感じつつ、興味を
失うこともなく二人を見つめ続けた。
 「うくっ」
小さなうめきが聞こえたかと思うと、斉藤は今まで以上に腰を跳ね上げ、果てた。その手は布団をきつく握りし
め、ぷるぷると震えていた。
 おしのは満足げにうなずくと、口の中のものを桶に吐き出し、またもや湯飲みの湯を口に含んだ。
 ほどなく、おしのは斉藤の股間に顔をうずめた。
 「―――ひっ」
斉藤のつぶやきだけが静かな座敷に広がり、もぞもぞと動くおしのの体はちとせの面前から移動してはくれな
かった。



 ぴちゃぴちゃと水気を含んだ音が続き、びくんびくんと波打つ斉藤の体が行灯の明かりに照らされ、それでも
おしのの顔は斉藤の股間から離れなかった。







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