六 の 座 敷




(二)



 しばる、と言っても常陸屋は決しておとよの苦痛になる様なことはしない。
 あざになるほどきつくはせず、しかし締め付けているということを感じさせる程度の緩さで。
 一方おとよも、この遊戯を楽しんでいた。
 しばり、しばられ。それがこの二人にとって一番の快楽につながっていた。
 「―――あれ、旦那。そんなことをしちゃ痛いじゃないのさ。ちょいと、旦那……」
 「おとよ。おまえは手くせが悪いだけじゃなく、口も悪いねぇ。この私に向かってそんな口をきくなんて
十年早いよ」
 「だ、旦那……」
言うが早いか、常陸屋は自分の懐に入っていた手ぬぐいを丸めておとよの口に突っ込んだ。
 「むっ……ふぅんっ」
おとよは苦しそうにあえいだが、そこは常陸屋。口の中に物は詰めても息ができぬようなことはない。
ある程度のゆとりを持っておとよを苦しめていた。
 「はれ、おとよ。おかしいねぇ。おまえのここはさっきよりずっと濡れているよ。―――まさか、おとよ。
小便をもらしたわけでもあるまい」
常陸屋はおとよの股をぐいと開くと、黒々とした茂みの中に顔を埋めた。
 「―――んんんんん……」
おとよは声をあげることもできず、もごもごと何かをつぶやいていたが、今の状態では息をするのもやっ
とというありさまだった。
 「いや、おとよ。おまえのここはどうやら露で濡れているらしいねぇ。まったくお前という女は、どうして
こうもいやらしいのかねぇ……」
おとよの露でてらてらと輝く口の端をあげ、常陸屋はにやりと笑った。
 「どれ、どれ。お前の観音さんをおがんでやろうかねぇ」
そう言った常陸屋は、ふいに立ち上がると座敷の端にある小さな物入れを開いた。
 中には幾本もの縄がしまわれており、しかし、それは体を傷つけるような荒い縄ではなく、例えて言
うならば、帯締めの様な柔らかな『ひも』であった。
 「―――まったく、お前は本当にいけない女だねぇ……」
常陸屋は尚もぶつぶつとつぶやいていたが、その目はきらきらと輝き、その口元さも楽しげに緩んでい
た。
 一握りのひもを取り出した常陸屋は、布団に転がっているおとよを仰向けにした。
 「んんん……」
 「どれ」
常陸屋はおとよの両方の足首をそろえ、ひもで固定した。
 しかしその方法は優しく、足にあとが残らぬ様にある程度のゆるみもあり、両足の間にはさらに握り
こぶしふたつ程の隙間もあった。
 「んふふ……」
続いて、おとよの首に犬の様にひもを結わえると、その端を足首のひもと結びつけた。
 すると自然、首が苦しくなり、おとよはひざを曲げ、さらにはぱっくりと股を開き、あぐらをかいたまま、
おじぎをしているかの様な姿になった。
 「んふふふふ。おとよ、どうだいその姿は。苦しいかぇ。いや、お前ならば嬉しいのだろうねぇ」
 おとよは口の中の手ぬぐいのせいで息苦しくもあり、不安定な体勢で苦しくもあり、そして、この様な
姿をさらしている興奮に打ち震えていた。
 「おや……」
常陸屋は小さくつぶやくと、ふいと立ち上がった。
 「うむ。これじゃあおとよの観音さんをしかと見ることができやしない。どれ、縛り方を変えてみよう」
苦しげにうめくおとよの首と足首からひもをはずすと、今度はひざをしっかりと折り曲げ、ふとももの根
元から足首にかけてひもを渡した。
 そう、正座した状態のままで、立ち上がれぬように足を固定した様なものだ。
 今度は常陸屋、満足げにうなずくと、仰向けに転がしたおとよの足をぱっくりと開いた。
 「ふほほほほほ。よしよし、おとよ。お前の観音さんが一目で見えるぞ。んふふ。こりゃ、いい」


 おとよは息ができるとはいえいつもの様にはいかず、布団の上であられもない姿をさらけ出している
自分を想像すると、女としての恥ずかしさよりも、これから何が起こるであろうかという興奮が先走り、
真っ白な体を桜色に上気させ、自分の股の間でうごめく常陸屋のまげを見下ろしていた。






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