風  鈴



(三)



 そしてわずかな排泄感を残し、連釈が引き抜いた。
 「―――んぁ……」
よだれにまみれた清一郎の口を連釈は自分の唇で塞ぎ、自分自身を抜いた清一郎の穴
に指を二本差し込んだ。
 「んふぅ……」
そして器用に指を動かし、ここぞという部分を決めるとぐりぐりとかき混ぜた。
 「んはっ。―――ひ……、んんん……あひっ……」
 「いけいけ、いくのじゃ、ほれ、ほれ……」
清一郎は果ててはいなかった。それを知った連釈は容赦なく清一郎の菊門をほじる。
 「んぁ……。ご、ご主人さまぁぁぁぁぁっっっ」
 清一郎は連釈に注ぎ込まれた精を連釈にかき出され、そして自分自身の熱い精を腹に
飛び散らした。
 「よいぞ、よいぞぉ」
連釈は清一郎が果てるのを見て取ると、清一郎を素早く仰向けに転がした。
 「清一郎、清一郎……」
 「―――あい、ご主人様……」
 「お前は可愛いのぅ。本当に可愛いのぅ……」
清一郎の吐き出した精を長い舌を出してべろりべろりと舐め、そしていたわる。
 「全てがわしのものじゃ、時の制限があっても、今だけはわしのものじゃて……」
連釈は清一郎の精を全て舐め取り、自分が注ぎ込んだ精をかき出し、そして眠る。
 まるで子供の様にすやすやと眠る。
 酒は飲んではいなかった。

 ただ、清一郎に酔っていた。



 次の日の朝、連釈は自分の隣りに清一郎の温かな体があることを確認すると、薄目を
あけた。
 すでに寺に帰らねばならぬ時間であった。
 「―――清一郎、これ清一郎」
 「―――あい、ご主人様」
 「わしはもう帰らねばならぬ。支度をせぃ」
 「あい、あい」
清一郎はぐずぐずと重だるい腰を上げた。
 「のう、清一郎。今度の土産は何が良いかの」
 「はて……」
 「また風鈴というのも芸がなかろうて」
連釈はしばし考えた後、
 「ま、何か見繕って来よう。また十日もせずに来るつもりじゃて」
 「おありがとうございます」
 「ふむ」
 夜の連釈とは違い、朝の連釈はそっけ無かった。清一郎はそれが少し寂しくもあった
が、さりとてそれを口に出す勇気も無かった。
 「お気を付けてお帰り下さい」
 「おう。迎えの者も来ておろうて」
 「では十日の後に……」
 「十日の後に、な」
連釈は振り向きもせず、清一郎の座敷を出た。

 清一郎の座敷を出るときに振り向かぬのは、名残惜しいからに他ならぬ。
 今、振り向いてしまうと、また座敷に戻り、清一郎を抱いてしまいたくなるからだ。
 年甲斐もなく、しかも男色などとは……。


 ご家老が聞いたら、卒倒するぞぃ。


 連釈は心の内で小さくつぶやくと、十日の後にこの宿に来る時の、清一郎への土産を
考え始めた。



 それより八日の後、少し離れた山間の寺が火事にあった。
 二十名より下らぬ坊主、小坊主、はては下働きのじじいまで一人残らず焼け死んだと
か。
 不審な火の起こりで、火盗改メも動いているとか。
 そんな瓦版でちんっと鼻をかみ、季節はずれのかぜに悩まされているちとせは、二階
で連釈を待つ清一郎を不憫に思った。

 待っても待っても来ることはない。
 連釈は死んだ。
 たぶん連釈の任務を良く思っていない役人が手を回し、寺に放火したのであろう。

 待っても待っても来ることはない。



 それを清一郎に言うことはできない。








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