七 の 座 敷
(八)
「―――斉藤様」
「おう、おかみ。おしのはいるか」
ちとせ屋に着くなり、斉藤はおしのを探した。
「はい、ただいま。それより旦那」
「どうした」
「今日はちょっと趣向を変えて風呂場でなんてどうでしょう」
「風呂場で……。ふふん。おもしろい。先に風呂に入っているからおしのに来いと伝えてくれ」
「かしこまりました」
斉藤はにやにやと笑いながら湯殿に向かった。
しかし、ちとせも不敵な笑みが浮かんでいた。
「―――斉藤様。入ってもよろしいですかぃ」
「おお、おしのか。入れ入れ」
「では……」
ほっそりとしたおしのの体が湯気の向こうに見えた。
何も隠そうとはせず、髪も下ろしていた。
「斉藤様、どうぞお湯からおあがり下さいまし」
ざぶりと湯から上がった斉藤はどかっと座り込み、おしのを待った。
「斉藤様、まずはごあいさつ程度に……」
言うが早いか、おしのは斉藤の股間に顔を埋めた。
「―――うんっ……」
斉藤の腰がびくりと跳ね上がった。
そのまま湯殿に寝転がると、斉藤はおしのの舌の動きを楽しんだ。
「斉藤様……。相変わらずお元気ですね」
「―――うぅぅぅ」
おしのは斉藤の菊門につぷりと中指を差し込んだ。
「うくっ」
口の中で斉藤が強度を増した。
「斉藤様、また大きくなりましたよ」
おしのの指が斉藤の腹の中をまさぐる。
「斉藤様、ここがよろしいですかぃ」
おしのの指が斉藤の中をさする。強く、緩く。そして激しく動く。
「―――うくぅ……」
おしのの口からは唾液と斉藤が出す粘液とが垂れていた。それすらも妖しく見える。
反対の手は斉藤自身の根元をこすりあげ、そしてやわやわともみほぐす。
絶え間なく舌で愛撫し、強く吸い上げる。
さらに指で腹の中を刺激する。
「―――うんっっ」
斉藤は小さく声を上げるとおしのの口の中に果てた。
しかしおしのの指の動きは止まらない。
尚も執拗に腹の中をかき混ぜる。
「うむむむむっ……」
声にならない苦しいほどの快感に斉藤は酔いしれていた。
おしのの指は想像もできないほどの動きで斉藤を攻めていた。
斉藤は何度も何度ものけぞり、そしてがっくりと腰を落とした。
おしのはそんな斉藤を見下ろすと、口をすすぎ湯をかぶった。
体を温め、足の斑点を充分に現したところで斉藤の目の前に立った。
快感で思考の鈍った斉藤の顔をまたいで見下ろした。
「―――斉藤様。いや、斉藤……。聞こえるか、斉藤」
「誰じゃ。わしの名前を呼ぶのは」
「私だ。おしのだ」
「おしのか……、お前、わしの顔をまたいで何をしておる」
「見ろ斉藤」
ぼんやりと視点の定まらぬ斉藤がゆっくりと顔を上げた。
「斉藤、私は水神じゃ。お前と交わりたくてこの世に姿を現した」
「す、水神……」
「見ろ。これが証拠じゃ……」
おしのは自分の内股にあるうろこ模様の斑点を指し示した。
「―――な、何っ」
「私はお前に会いたくて、お前と交わりたくて人間の姿になってここの世話になっている。どうじゃ、
斉藤。私を抱いてくれるか。それとも……」
斉藤はおしのの内股を見上げると、ごくりとつばを飲み込んだ。
おしのはそのままゆっくりと斉藤の顔の上にしゃがみこんだ。
「―――斉藤……。私はお前とは身分が違う。私は神だ。恐ろしいか」
斉藤はぶんぶんと首を横に振った。
「私を抱いてくれるかぇ」
斉藤はより激しく首を縦に振った。
「では、舐めろ」
おしののこの言葉で深く暗示にでもかかったのか、斉藤はむしゃぶりつくようにおしのの花びらに
吸い付いた。
「―――斉藤……。さいと……う……」
どうも斉藤はすっかりだまされたらしく、あれからも足しげくちとせ屋に通っていた。
おしのは水神の化身で、自分に会いたくて人間のふりをしている。
まぁ、それでもいい。
悪気のないウソだ。
ずっと騙されていた方が幸せだ。
ちとせはおしのと酒を酌み交わし、にやりと笑った。
風呂で温めたときにはくっきりと現れていた斑点であったが、ほんの少しの酒の酔いでは
うっすらと見えるだけであった。
しかし、肌の薄黒いおしのの足にはなんとも神秘的な影の様に見えた。
まるでさかなのうろこの様な斑点。
水神様……。
八百屋の辰三の話を先に聞いていたから変に勘ぐっちまったのかもしれないね。
ちとせはおしのの話を聞くと、泥棒の様におしのの座敷や風呂を覗いていた自分がおかしかった。
今となってはおしのと自分は秘密を分かち合った仲間である。
それもまた楽しい話で。
「―――おしの、もう少しであんたの座敷ができあがるからね。納戸からは引越しだ」
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