四 の 座 敷



(四)



 「―――ん……、旦那、早すぎやしませんかねぇ」
 「はぁ……」
徳之助は、かよの中に侵入したとたん、またもや果ててしまった。
 「困ったもんですねぇ」
 「す、すみません」
 「いやね、あたしゃいいんですけど、このままじゃ好きな女を抱けませんよ」
 「はぁ……」
かよは紙で自分の花びらをさっと拭うと、徳之助の痕跡を消した。
 「でも立ち直りは早いんですよね」
 「………」
かよの言うとおり、徳之助はまたも熱を持ち、猛々しくいきり立っていた。
 「どうしたもんですかねぇ……」
 「はぁ……」
当の徳之助も顔を真っ赤にしてうつむいたままだった。
 「旦那、しばらくの間、ここに通ってみるってのはどうです」
 「通う、とは」
 「だからね、少しは女に慣れなきゃいけないじゃないのさ。今のままの旦那だと、好きな女の着物を
脱がせただけで果てちゃいますよ」
 「は、はぁ……」
 「それとも元々早いタチなのか……」
すっかり汗のひいてしまったかよは、冷静な瞳で徳之助のモノを見た。
 「立派なモノを持ってらっしゃるのに役に立たないんだからねぇ」
 「すみません」
 「謝ってもらうことじゃありませんよ。―――どれ、出るものも出し切ってしまえば続くかもしれません
んねぇ」
とたんにかよは徳之助の股間に顔を寄せた。
 「お、おかよ……」
 「あたしの特技はこれなんですよ」
 「―――んぁ……」
かよは食いつく様に徳之助に挑みかかった。
 素早く指で裏側のスジを撫で上げ、唇で吸う。
 くびれた部分に舌を絡める。
 「―――むふん……」
あえなく徳之助は果てる。
 しかしかよは唇の隙間から精をこぼれさすと、そのままぐちゅぐちゅと音を立てて続ける。
 「お、おかよ……」
情けない声をあげ、徳之助は腰を引いた。
 が、かよは徳之助の腰をつかむとぐいとのどの奥まで吸い込んだ。
 「ひぃぃぃぃ……」
思いも寄らぬ快感と、初めての経験で徳之助はすでに夢の中にいる様なものだった。
 幾度目かの精の噴出を口で受け止め、尚も執拗に吸うかよの口腔内は妖しく絡み付いてくる。
もはや徳之助は他の事など考えられぬ様になっていた。
 「はひぃ……」


 徳之助の目には、ほんのりと紅く色づいている昇り龍の目がいつまでも映っていた。



 「―――ごめんくださいまし……」
 ちとせ屋の入り口に小さな声がかかった。
 「いらっしゃいまし。―――あら、番頭さん」
出迎えに出たちとせは、顔見知りの男を見てにっこり笑った。
 「おかみさん。今日も座敷を一つお借りしたいんですけど」
 「よござんすよ。お酒はつけますかね」
 「いや、あまり時間もないのでこのまま座敷へ……」
 「はいはい」
 ちとせは、歳若い恋人同士を奥の座敷に通した。
 「ごゆっくり……」
そう言うと、ちとせは恥ずかしそうに顔を赤くしている女を見た。
 まだ若い。そう十五、六の娘。男は二十より少し若い。
 ちとせ屋は女郎を置いて客をもてなしてもいたが、こういう若い恋人同士のために座敷を貸してい
た。
 食事も出す。
 客を厳選していたが、茶屋、つまり連れ込み宿の様なこともしていたのだ。

 しかし、今の二人。
 まれに見る、お似合いの二人だった。
 男は廣田屋の番頭の与五郎。相手の女はおまき、とか言ったっけ。
 近く祝言を挙げる予定とか。
 二人が惚れあっているのは一目瞭然であった。
 「めでたい、めでたい」
ちとせは二人を思い、心から喜んだ。


 はて……。

 そういえば……。


 廣田屋の若旦那がかよの座敷に来ていた様だったが……。







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