四 の 座 敷



(二)



 かよの指はしなやかに動き、徳之助のモノを優しく包んだ。
 徳之助は緊張した表情ではあったが、すでに硬くいきり立ち、先端からはとろりとした汁をたらして
いた。
 「―――旦那、あんたはいいモノを持っていなさる」
かよは小さくつぶやくと、どぎつく紅をさした唇でそっとつついた。
 「んぁ……」
徳之助は背中にぞくりと何かが走るのを感じた。
 「サオは細めだけど先が広くなっていて、これが女を喜ばすんだよ」
かよは独り言のようにつぶやき、続けた。
 続いてかよは徳之助の足の間に座り込み、驚いて起き上がろうとした徳之助を見上げた。
 「旦那、そのままで見ていておくんなさいな」
言うが早いか、かよは小さな舌を出して徳之助のサオを根元から舐め上げた。
 「んくっ……。あっ……」
えも言われぬ快感が全身を包み込み、徳之助はあっという間に熱い精を吐き出した。
 「―――あら、まぁ……」
かよは徳之助の精を口の周りに受けながらも、手はゆるゆるとサオをしごいていた。
 「気の早い旦那だこと……。でも、ねえ……」
一度精を吐き出した徳之助ではあったが、この年若い男は萎えることを知らなかった。
 恥ずかしそうにかよを見ながらも、下半身の熱が冷めないことを感じていた。
 「これからたっぷりと教えて差し上げますよ、旦那」
かよは口の周りを舌でぺろりと舐めると、そのまま勢いよく徳之助をくわえ込んだ。
 「―――んっ……」
徳之助はあまりの快感にのけぞった。
 かよの指は優しく根元の袋をもみほぐし、唇はきっちりとサオを締め付け、更に舌で一番敏感な
小さな穴をつつく。
 柔らかく暖かな口腔内の微妙な締め付けで、徳之助はまたもあっさりと果てた。
 かよは精を口の中で受け止め、顔を上げてにやりと笑った。
 その口からは、どろりとした徳之助の精が流れ落ちる。
 かよは口の中に指を入れ、徳之助の吐き出した精を唇からわざと垂れ流した。
 真っ赤に塗られた紅とは対照的に、白濁した唾液も徳之助の欲望に、より一層の火をつけた。
 「―――旦那、もう少し我慢して下さいな。そうねぇ……、気持ちがよくなっても、自分が一番
嫌いなものを想像してごらんなさいよ。そうすればもう少しもつから、ね」
かよはくっくっと笑い、またも徳之助の股に顔を埋めた。
 「んぁっ」
徳之助はびくんびくんと女の様に体を引くつかせ、自分の股間でひょこひょこ動くかよの頭を見下ろ
した。
 しかし徳之助はかよの言葉に素直に従い、一番嫌いな番頭の与五郎の顔を思い浮かべた。

 番頭の与五郎は徳之助と年も近く、小さな頃から遊んだ、そう、幼なじみという間柄であったが、
徳之助のいとこのおまきに好意を持っていた。
 おまきの方もまんざらではなかった。徳之助はそれが面白くなかったのだ。
 徳之助もおまきのことが好きだったのだ。行く行くはおまきを嫁に…、と思っていたのだが、与五郎
がおまきを嫁にもらったあかつきには、廣田屋ののれんを分けようと父親が言い出した。
 徳之助はそれもまた面白くない。
 廣田屋はお上のご用達の文具問屋であった。筆から墨、紙の類。はたまたものさしや硯など、
数多くの品物を扱っていたのだ。
 しかし、その廣田屋ののれんを分けるとなると、自然、お上も与五郎の店を使うこともありうる。



 ―――面白くない。まっこと、面白くないものだ。

 徳之助は憎き与五郎の顔を思い浮かべ、その隣りに白い角隠し姿で並んでいるおまきのことを
思い浮かべぎりぎりと歯を食いしばった。
 そのおかげなのか、徳之助はすぐに果てることもなく、ゆるゆると動くかよの頭を見下ろせた。
 そして余裕も出てきたのか、自分の具合のいいように腰を浮かせた。
 「―――あら、旦那。ずいぶんと慣れてきましたねぇ」
濡れててらてらと光るかよの唇は、例えようもなくなまめかしく見えた。
 かよの顔は口の周りだけではなく、あごまでも濡れていた。顔を上げたとたんに、のどもとまでも汁が
流れ落ちた。
 「―――た、頼む、おかよ。私は好いた女がいる。その女をものにしたい。ぜひご指導願いたい」
 「はぁ……」
徳之助のおかしな願いにかよは首をかしげた。
 「私の好きな女は他に好いた男がいる。だけど私はどうしてもその女が欲しい。どうしても欲しいの
です」
 「ふぅん……」
 「頼みます。どうすれば女をものにできますでしょうか。教えて下さい」
 「夜這いをする気かい」
 「………」
徳之助は黙り込んだ。
 何ひとつ身に付けもせず、自分自身はへそまで反り返り、女を抱いたこともない男が今にも泣き出
してしまいそうな顔でかよを見つめていた。
 かよは笑ってしまいそうになるのを懸命にこらえ、背を向けて枕もとのきせるに火を付けた。
 「あんた、いくつだい」
 「今年十八になりました」
 「その女は」
 「十五です」
 「いい頃合いだ。―――ふん、判ったよ旦那。あたしが女の気持ちのいいところを全部教えてあげま
すよ」
 「あ、ありがとうございます」
徳之助は畳に額が擦れてしまうほどこすりつけ、かよに頭を下げた。
 「まずは、旦那。あんたが女の体に慣れてもらわなくちゃ困りますよ。女の姿を見ただけで果ててしまう
んじゃ、お話になりませんからね」
 「ははは」
徳之助は恥ずかしそうに笑うと、かよの彫り物を見つめた。
 「―――おかよ。昇り龍が美しいねぇ……」

 ぽつりとつぶやく徳之助の言葉が、かよの耳に届いた。







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