風  鈴



 いらっしゃいまし。
 ちとせ屋の主(あるじ)、ちとせでございます。
 こちらの座敷は男娼『清一郎』の座敷にございます。
 男同士の情愛の苦手な方はご遠慮願います。
 ごゆるりとお楽しみ下さいませ。



(一)



 「―――ひぃぃ……」
清一郎の腰はがくがくと震えていた。
 連釈(れんしゃく)の手にはきらりと光るかみそりがにぎられていた。
 「動くな。動くとけがをするぞぃ」
にやにやと気色の悪い笑みを浮かべた連釈は、清一郎の縮み上がったモノをつまむと
じょりじょりと音をさせて毛を剃った。
 ここはちとせ屋の湯殿。
 連釈は清一郎の股の間に顔をうずめ、一心不乱に毛を剃っていた。
 「うぅぅぅ……」
 「この毛がじゃまでおまえの菊門が見えやしない。金はたんまりと払う。黙っておれ」
 この連釈。ちょいと離れた山間の大きな寺の住職であった。
 この時代、坊主が女と情を交わすことはご法度だった。しかし、このちとせ屋には男娼
が何人かおり、こういった変わった好みの客にも対応できた。
 しかし、清一郎はまだ若く、客も数えるほどしか取っていなかった。連釈はいたく清一郎
が気に入り、ここのところ十日に一度は参っていた。
 「ほれ、尻をこちらに向けろ」
 「っく……」
すでに清一郎の目にはたっぷりと涙がたまっていた。
 清一郎は線の細い、いかにも男色に好まれる表情の持ち主だった。
 白く滑らかな肌。
 小さな顔に程よく整った目鼻立ち。
 細い首に薄い胸板。
 長く美しい指は女のそれと変わらなかった。
 しかし見た目とは裏腹に、清一郎は毛深い男だった。
 「―――ほれ、こうすればよく見える」
 「ひんっ……」
 「泣くな、泣くな。どれ、触ってみろ。さらりとして、今までよりもずっと良いぞ」
連釈はにたにたと笑いを続け、清一郎の下半身に湯をかけた。
 「うはははは。良いぞ良いぞ。まるで赤子のようだ」
立場を忘れ子供のように喜ぶ連釈は、自分の子供よりも歳若い清一郎に惚れている
のかもしれない。


 ここにいる時だけなのだ。
 この場にいる時だけ、自分の立場を忘れられる。
 檀家の苦情や城の役人への報告。
 連釈は、この城内を取り仕切る秘密組織の頭目でもあったのだ。


 この藩は異国からの取引で財を成し、それと同時に抜け荷とあへんで力のある町人は
私腹を肥やしていた。
 私腹を肥やすためには、役人も手の内に入れねばなるまい。できれば力のある役人に
越したことはない。
 そういった役人と町人との公にできないつながりを調べるのが、連釈の組織の仕事だっ
たのだ。大任だったが、すでに十年以上もその任に就いていた。
 この任務は、とかく精神が疲れてしまう。どこかで発散しなければ壊れてしまうであろう。


 「清一郎、どれ、味見をさせてくれ」
連釈は小太りの腹をかかえ、板張りの床に腰を下ろした。
 清一郎は素直にうなずくと四つんばいになり、連釈に尻を向けた。
 「手で開いて見せろ」
 「………」
清一郎は言うがままだった。むしろ、命令されることの方が好みであった。
 清一郎の白い手で押し広げられた尻は、まるで汚れを知らぬ『おぼこ』の尻の様だった。
 「ひひひ……」
連釈は右の人差し指をぺろりとねぶると、つぷり、と清一郎に指を突き刺した。
 「っん……」
清一郎はびくんと体を起こすと、ちらりと連釈を振り仰いだ。
 「そんな声を出すな。いきなり貫いてしまいたくなる」
連釈の指はくねくねと動き、まるで生き物のように清一郎の胎内を蹂躙していた。
 「―――んはぁ……」
清一郎自身は半分ほど立ち上がり、その先からは柔らかな光を放つ露がたれていた。
 「きれいだぞぃ、清一郎。今まで見た男の中で、一番美しい尻をしておる」
連釈は優しい言葉を細々とつぶやいていたが、その内容は決して優しいものではなかっ
た。その証拠に坊主の指は二本に増えていた。
 「はぅ……。ご、ご主人さまぁ……」
 「よしよし、たまらんか。たまらんだろうのぅ。ひひひ。お前のサオもひくひくしておるぞぃ」
 真っ赤な顔で何かに耐えている清一郎の表情を見ているだけで、連釈のイチモツは熱
を持ち、だらしなく精を吐き出すのだった。
 「うひっ、うひっ……。いいぞ、いいぞぃ、清一郎。もっと苦しそうな顔をして見せてくれ」


 連釈の左手は、、絶えることなく自分のモノをさすり続けていた。







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