一 の 座 敷
いらっしゃいまし。
ちとせ屋の主(あるじ)、ちとせでございます。
一の座敷は『しず』の座敷にございます。
ごゆるりとお楽しみ下さいませ。
(一)
「―――しずよぉ……。おまえの観音さんは美しいのぅ」
天満屋の主人、長治がぬらぬらと濡れ光る唇でしずのはなびらを吸う。
「―――んんん…。長治さま、もっと…、もっと……」
「そうかそうか。しずよ、おまえもスキモノだのう」
けけけ、とゲビた笑いを口にした長治は、まげもずいぶんと後退した四十すぎの男。
むざんにとびでた腹は、長治の悪事を秘めた蔵。
ちとせ屋の女郎と遊ぶには、良しも悪しも金が必要だった。
長治は藩に金を高利で貸し付け、私腹をこやしていた。
「―――しずよぉ……。おまえの観音さんがわしを呼んでいるぞい。ひひひ。指を
くわえ込んだままはなさんわ」
長治の指は一本、二本としずの体の中心に沈んで行った。
「ひぃ、ち、長治さまぁ……。あたし、あたし……」
「どんどん露がたれてくるぞ。手首まで濡れてきたわい」
長治の指は三本までもしずの中に納まった。
と、そのとたん。
「ひぃぃぃぃぃ……」
か細い声をあげて、しずが気をやった。
さらさとした透明な液体が、長治のひじまでも濡らす。
桜色の全身よりも深い紅色の花びらから、とろとろと露が流れ出した。
長治はゆっくりと指を引き抜くと、指からしたたるその露をゆっくりと舌で舐めとった。
「しず、いくぞ」
「―――長治さまぁ……」
しずは息がおさまる間もなく、柔らかな壁で長治を包み込んだ。
「ふぅぅぅ……」
長治は息をゆっくりと吐き出し、腰を動かした。
「はぁぁぁ…。ひぃっ、ひぃっ、ち、長治さまぁ……」
しずの中はうねうねと長治を包み込み、貪欲に吸い込む。くわえたまま離さない。
「しず、しず…、おとっつぁんと呼んでおくれ…」
「―――お、おとっつぁん…。もっと、もっと、しずに体をぶつけて下さいな……」
長治は自分の娘と体を交わらすことが夢だった。
ただ長治に娘はいない。二人の息子がいるだけだった。
長治はちょいとゆがんだ性癖の持ち主だ。
大店(おおだな)の主人という身分で、ゆがんた性癖があることを告白するには危険
が大きすぎた。
だからちとせ屋で全てを吐き出すしかなかった。
そのためには、小判を何枚、何十枚とばらまいても悔いはない。損もない。
しずもそれを承知で肌を重ねていた。
「―――おとっつぁん。しずは、しずは……」
「しずよぉ、おまえの観音さんはえらく具合がいいぞぃ。わしをくわえ込んだまま、ゆ
るゆると締め付ける」
「んんん……。はぁ…、はぁ……」
のけぞるしずの白いくびすじに唇をはわすと、長治はべろりと舐めた。
耳を舐めた。
乳房をきつくつかんだ。
乳首を強くつまんだ。
「ひぃぃぃぃ……」
しずは布団をにぎりしめ、再度、気をやった。
「しず…、しず…、わしの娘……」
中にいる長治をすさまじい圧力で締め付け、長治もすぐにしずの中に果てた。
脱力し、しずの上におおいかぶさっている長治の耳元で、しずは小さくつぶやいた。
「―――おとっつぁん……」
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